インフルエンザ治療の基本

 

秋から冬季にかけて爆発的に流行するインフルエンザですが、基本をしっかり押さえて患者の状況にあった処方ができるようにしておきましょう。

 

主な抗インフルエンザ薬の用法用量

外来患者に対するインフルエンザ治療の基本

抗インフルエンザ薬による治療適応となるのは合併症のリスク高い患者で、原則発症から48時間以内のもの

治療はオセルタミビル(タミフル®)またはザナミビル(リレンザ®)を5日間

インフルエンザの諸症状の改善が約24時間早まる可能性があり細菌性肺炎や入院のリスクが減る可能性がある

 
インフルエンザ合併症併発の高リスク患者
5歳未満の小児(特に2歳以下の乳幼児が高リスク)
65歳以上の成人
妊婦、産後2週間以内
以下の基礎疾患を有するもの
・慢性呼吸器疾患:喘息、COPD、嚢胞性線維症など
・慢性心疾患:高血圧症のみは除く
・慢性腎疾患・慢性肝疾患・血液疾患
・慢性神経筋疾患
・神経発達異常:脳卒中、てんかん、精神発達遅延、脊髄損傷など
・代謝異常:糖尿病を含む
免疫抑制状態にあるもの:免疫抑制薬投与中、担癌患者、HIV感染者
19歳未満で長期にアスピリンを内服しているもの
著明な肥満(BMI≧40)
介護老人施設もしくは長期療養施設に入所しているもの

 

入院患者に対するインフルエンザ治療の基本

インフルエンザの診断あるいは疑いいずれであっても入院を必要とする患者であれば全例に対して治療を行う

外来患者とはことなり、発症後48時間を越えても治療適応になる

死亡率の低下および入院期間の短縮が見込まれる。

 
内服または吸入可:オセルタミビル(タミフル®)またはザナミビル(リレンザ®)
内服困難または腸管吸収低下:ペラミビル(ラピアクタ®)点滴
 
投与期間はオセルタミビル(タミフル®)とザナミビル(リレンザ®)は外来同様5日間、ペラミビルは単回投与が基本(重症例では確固たるエビデンスはないが連日投与するケースもある)。

 

妊婦のインフルエンザ治療

妊婦はインフルエンザの重症化、合併症併発の高リスク群でありインフルエンザの診断あるいは疑いいずれであっても、速やかな抗ウイルス薬の投与が推奨される
発症後48時間以上経過していても治療対象となる
 
妊娠中および授乳中のオセルタミビル(タミフル®)やザナミビル(リレンザ®)の使用可能。特に妊娠中は安全性の根拠が多いことからオセルタミビル(タミフル®)がより推奨される
妊娠0~12週(妊娠第1期)に関しては産婦人科と相談し仕様に関して検討することが望ましい。

 

小児のインフルエンザ治療

厚生労働省は2018年8月よりタミフルの10歳代の処方制限を解除している。ただしインフルエンザ罹患者は抗インフルエンザウイルス薬の服用の有無または種類にかかわらず異常行動が起こす可能性があるため、特に小児および未成年者では少なくとも2日間は転落等の事故に対する防止対策を講じるよう患者本人とご家族に説明を行うことが望ましい、としている。
 
日本小児科学会は「2017/2018シーズンのインフルエンザ治療指針」なかで10歳代患者には原則使用を差し控えるが、合併症や既往歴からハイリスクと判断される場合のみ使用を考慮するという提言をしている。

 

インフルエンザウイルスへの曝露後予防に関して

・予防での投与量と期間は治療時と異なることに注意(上記表参照)。
・病棟内や透析室内等でインフルエンザ患者が出た場合には曝露後予防を考慮する。
適応や対象範囲はケースバイケースであるため、各医療機関の感染症管理室など院内感染の統括部門に確認を。

本記事は適宜、修正加筆しています。ガイドラインの改訂や新たなエビデンスの発見などがありましたら、お気軽にコメントやお問い合わせフォームからご連絡ください。
 
(参考文献)
 
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