膀胱炎の基本

外来でよく遭遇する膀胱炎。クラビット処方がルーチーンになっている先生も多いのではないでしょうか。今回は専門外の先生でも適切な対応ができるよう、膀胱炎について、まとめました。

膀胱炎の臨床症状

膀胱炎の臨床症状としては一般的に、膀胱刺激症状(頻尿、残尿感、排尿時痛、恥骨上部痛など)がみられる

 

膀胱炎の検査

検尿(尿沈渣、白血球算定)を施行する。

基礎疾患(前立腺肥大症、神経因性膀胱、尿路奇形、尿路結石、腫瘍など)を持つ患者は再発を繰り返しやすいため、尿一般細菌培養、薬剤感受性検査を行う。

 

膀胱炎の診断

現在のところ明確な診断基準は定められていないが、一般的には臨床症状と膿尿・細菌尿を認め、他の疾患が除外できれば、膀胱炎と診断してよい。鑑別診断として性感染症による尿道炎や膣炎を除外する。
※尿沈渣検査において、尿中白血球数5個/hpf以上を有意な膿尿と考える。
※膿尿は特異度は高くないが感度が高いため、膿尿を認めない場合は積極的に他の疾患も疑う。

※海外のガイドラインでは「排尿障害、頻尿、緊急性、恥骨上部の疼痛、下腹部違和感」など典型的な症状を呈している女性に関してはそもそも尿検査せずに膀胱炎と診断してもよいとされているものもある。

 

膀胱炎の治療


急性単純性膀胱炎(閉経前)


第一選択

  • LVFX(例: クラビット®)経口1回500mg・1日1回・3日間
  • 
CPFX(例: シプロキサン®)経口1回200mg・1日2~3回・3日間
  • 
TFLX(例: オゼックス®)経口1回150mg・1日2回・3日間
※ESBL産生菌の約70%はキノロン系薬耐性であるため、セフェム系薬とキノロン系薬のいずれもが無効な場合が多い。

ESBL産生菌に有効とされている抗菌薬一例は下記の通り:

<経口抗菌薬>

  • FOM(例:ホスホマイシン® 1日量2~3g 分3~4)
  • 
FRPM(例:ファロム® 1回150mg~200mg 1日3回)


<注射薬>

  • アミノグリコシド系薬
    (例:エクサシン® 1日400mg 分1~2 筋注or点滴静注)
  • カルバペネム系薬
    (例:メロペン® 1日0.5~1g 分2~3 30分以上かけ点滴静注)
  • TAZ/PIPC
    (複雑性膀胱炎の例:ゾシン® 1回4.5g 1日2回 点滴静注)

 

高齢女性(閉経後)の膀胱炎

  • 再発を繰り返す場合には尿路や全身性基礎疾患の有無の検索が重要。
  • 
再発予防として、50歳以上の女性においてクランベリージュースの有効性が報告されており、65%飲料を1日1回飲用することによりプラセボと比較して有意に再発を抑制する。
  • 
再発予防に経腟エストリオール(0.5mg/日)が有効との報告があるが、わが国では一般的ではない。

第一選択

  • CCL(例:ケフラール® )経口1回250mg・1日3回・7日間
  • CVA/AMPC (例:オーグメンチン®)経口 1 回 125mg/250mg・1 日 3 回・7 日間
  • CFDN(例:セフゾン®)経口1回100mg・1日3回・5~7日間
  • CFPN-PI(例:フロモックス®)経口 1 回 100mg・1 日 3 回・5~7 日間
  • CPDX-PR(例:バナン®) 経口 1 回 100mg・1 日 2 回・5~7 日間

 

妊婦の膀胱炎

  • 
通常、セフェム系薬の5~7日間投与が推奨される。
  • 使用を避けるべき抗菌薬は、妊娠初期でキノロン系薬、テトラサイクリン系薬、ST合剤、妊娠後期ではサルファ剤。
  • 原因菌がセフェム耐性を示す場合には、CVA/AMPC、FOMなどの投与を考慮。
  • 
妊婦においては無症候性細菌尿も積極的に治療すべき。

第一選択

  • CFDN(例:セフゾン®)経口1回100mg・1日3回・5~7日間
  • 
CFPN-PI(例:フロモックス®)経口 1 回 100mg・1 日 3 回・5~7 日間
  • CPDX-PR(例:バナン®)経口 1 回 100mg・1 日 2 回・5~7 日間
  • CCL(例:ケフラール® )経口1回250mg・1日3回・7日間

 

複雑性膀胱炎 (カテーテル非留置症例)

  • 複雑性膀胱炎においては、抗菌薬投与と同時に尿路や全身の基礎疾患の正確な把握と適切な尿路管理が必要である。
  • 抗菌薬選択に迷ったら感染症科へコンサルト。

第一選択

  • 
LVFX(例: クラビット®)経口1回500mg・1日1回・7~14日間
  • CPFX(例: シプロキサン®)経口 1 回 200mg・1 日 2~3 回・7~14 日間
  • 
TFLX(例: オゼックス®)経口1回150mg・1日2回・7~14日間
  • 
STFX経口(例:グレースビット®)1回100mg・1日1回・7~14日間
  • 
CVA/AMPC(例:オーグメンチン®)経口 1 回 125mg/250mg・1 日 3 回・7~14 日間
  • SBTPC (例:ユナシン®)経口 1 回 375mg・1 日 3 回・7~14 日間

 

POINT

  • 膀胱炎の診断は臨床症状(+膿尿+細菌尿)
  • 単純性膀胱炎の場合の第一選択はLVFX or CPFX or TFLX
  • 抗菌薬投与期間は閉経前の女性は3日間、高齢女性は約7日間

本記事は適宜、修正加筆しています。ガイドラインの改訂や新たな報告などがありましたら、お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。

(参考文献)

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン 2015 ―尿路感染症・男性性器感染症―

泌尿器科診療に役立つガイドライン・ナビ

 

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