COPD急性増悪の初期対応

当直でCOPDの既往のある患者さんが呼吸苦で搬送されてくることは珍しくありません。
今回はエビデンスに基づいた初期対応をまとめました。一緒におさらいしていきましょう。

POINT
重症COPDでは挿管を避けるため、できる限りNPPVでの呼吸管理が望ましい。
COPD急性増悪の原因の多くは肺炎である。鑑別は心不全や肺梗塞が挙げられる。

NPPV使用の基準

  • 急性呼吸性アシドーシス(pH ≦ 7.35, pCO2 > 45mmHg)
  • 呼吸筋疲労・シーソー呼吸・吸気時の肋間の陥没

 

挿管の基準

  • NPPVでの管理が困難
  • 意識障害・呼吸抑制・気道分泌物多量や意識障害で気道確保が困難
  • 徐脈(HR<50回/分)で意識低下
  • 低血圧、ショック、血行動体が不安定・重度の心室性不整脈がある
  • 致命的な低酸素でNPPVでのコントロールが困難

 

初期対応について

  • 基本は酸素投与+SABA(短時間作用性β2刺激薬)+ SAMA (短時間作用性抗コリン薬)
  • 必要に応じてステロイドと抗菌薬を追加する。

 

酸素投与

SpO2 90%前後(88-94%程度)PaO2 60-70%

※高濃度酸素投与が必要な場合にはナルコーシスに注意する。

SABA: 短時間作用性β2刺激薬

(例1)サルブタモール(ベネトリン®): 2.5mg(0.5mL)吸入 / 1-4h
(例2)サルブタモール(サルタノールインヘラー®100μg)1回2吸入(200μg)/ 6h
(例3)プロカテロール(メプリンエアー®10μg)1回2吸入(20μg)/ 6h

 

SAMA: 短時間作用性抗コリン薬(SABAと併用)

(例1)イプラトロピウム(アトロベントエアゾル®20μg)1-2噴射(20-40μg)/ 4-6h
(例2)オキシトロピウム(テルシガンエアゾル®100μg)1-2回2吸入(100-200μg)/ 8h

 

ステロイド

(例)経口プレドニン®40mg/日を10-14日間

※ステロイドの種類・容量・期間など確立したエビデンスはなし。上記はあくまで専門家の意見に基づいた処方例。
※その他系統への換算は表を参照

<ステロイド換算表>

 

抗菌薬(肺炎合併・膿性喀痰が多い場合に考慮)

外来治療第一選択

  • LVFX(例: クラビット®)経口 1 回 500mg 1 日 1 回
  • GRNX(例:ジェニナック®)経口 1 回 400mg 1 日 1 回
  • MFLX(例:アベロックス®)経口 1 回 400mg 1 日 1 回
  • STFX(例:グレースビット®)経口 1 回 100mg 1 日 2 回または 1 回 200mg 1 日 1 回

外来治療第二選択

  • CVA/AMPC(例:オーグメンチン®)経口125mg/250mg 1 回 2 錠 1 日 3~4 回
  • SBTPC(例:ユナシン®)経口375mg 1 回 1 錠・1 日 3 回
  • AZM(例:ジスロマックSR®)徐放製剤経口 1 回 2g・単回

入院治療軽症例

  • CTRX(例:ロセフィン®)点滴静注 1 回 2g 1 日 1 回または 1 回 1g・1 日 2 回
  • LVFX(例:クラビット®)点滴静注 1 回 500mg 1 日 1 回
  • SBT/ABPC(例:ユナシン-S®)点滴静注 1 回 3g 1 日 3~4 回

 

<重症例>

FEV1予測値<35%、抗菌薬の使用歴、長期ステロイド使用、入院歴、過去の喀痰培養で緑膿菌検出、インフルエンザワクチン未接種」などのリスク因子でP. aeruginosaを考慮する。

  • MEPM(例:メロペン®)点滴静注 1 1g 1 23
  • DRPM(例:フィニバックス®)点滴静注 1 0.51g 1 3
  • BIPM(例:オメガシン®)点滴静注 1 0.30.6g 1 34
  • IPM/CS(例:チエナム®)点滴静注 1 0.51g 1 24
  • TAZ/PIPC(例:ゾシン®)点滴静注 1 4.5g1 34
  • PZFX(例:パズクロス®)点滴静注 1 5001,000mg 1 2
  • CPFX(例:シプロキサン®)点滴静注 1 300mg 1 2
  • CAZ(例:モダシン®)点滴静注 1 12g 1 24
  • CFPM(例:マキシピーム®)点滴静注 1 12g 1 24
  • CZOP(例:ファーストシン®)点滴静注 1 12g 1 24
  • CPR(例:セフピロム®)点滴静注 1 12g 1 24

※重症度に応じてアミノグリコシド系薬の併用する

  • AMK(アミカシン®)点滴静注 1 200mg 1 2
  • GM(ゲンタマイシン®)点滴静注 1 60mg 1 2
  • TOB(トロビシン®)点滴静注 1 90mg 1 2

 


本記事は適宜、修正加筆しています。ガイドラインの改訂や新たな報告などがありましたら、お気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。

(参考文献)

JAID/JSC感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症―

Lancet. 2012 Apr 7;379(9823):1341-51.

 

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