市中肺炎

外来から病棟管理まで幅広い対応が求められる市中肺炎の初期対応についてまとめました。

※下記はあくまで対応の一例であり、治療にあたっては必ず個々の病態に応じた対応を要することをここに明記します。

治療場所の決定

外来で加療可能か、入院が必要かの簡易的な判断については、日本呼吸器学会が提唱する「A-DROPシステム」のほか、英国胸部学会(BTS: British Thoracic Society)の提唱する「CURB-65」が汎用される。

「CURB-65」に関しては30日後の死亡リスクに関して推測するためにも使用しやすい。

NEJMに掲載された「PSI(Pneumonia Severity Index)」は20項目の重症度判定ツールであり、救急外来に訪れた患者を帰宅させることができるか評価するためのツールとして使用できる。

以下「A-DROPシステム」、「CURB-65」の表を掲載する。

「PSI(Pneumonia Severity Index)」については評価項目が多いので下記リンク先参照。

Community-Acquired Pneumonia Severity Index (PSI) for Adults

 

以下では「細菌性肺炎疑い」「非定型肺炎疑い」「肺炎球菌性肺炎」の3項目に分けて、成人市中肺炎のエンピリック治療についてまとめていく。

 

細菌性肺炎疑い

※外来治療であっても適宜注射薬を選択する
※基礎疾患は糖尿病、腎疾患、肝疾患、心疾患など

<外来>

1)基礎疾患、危険因子がない場合:
・βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン系薬(ペニシリン高用量)
(処方例)
「オーグメンチン®配合錠250RS [375mg] 3TX3 7日間
+ サワシリン®カプセル [250mg] 3CX3 7日間」

※AMPC500mg/CVA125mgの合剤がないためAMPC250mg/CVA125mg合剤にAMPC250mgを追加で処方する方法。AMPC1500mgを目標にオーグメンチン®を処方するとCVA過量となり下痢などの副作用が増強される恐れがあるため用いられる。

2)65歳以上あるいは軽症の基礎疾患がある場合:
・βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン ± マクロライド系またはテトラサイクリン系経口薬
(処方例)
「オーグメンチン®配合錠250RS [375mg] 3TX3 7日間
+ サワシリン®カプセル [250mg] 3CX3 7日間」
上記に加えて必要に応じて以下①②のいずれか
①「ジスロマック®SR成人用ドライシロップ[2g] 2gX1 空腹時に単回内服」
②「クラリス®錠[200mg] 2TX2 7日間」

3)慢性呼吸器疾患、最近抗菌薬の使用歴、ペニシリンアレルギーの場合:
・レスピラトリーキノロン経口薬(肺炎球菌もカバーするキノロン系)
(処方例)
「クラビット®錠[500mg] 1TX1 7~14日」

※キノロン耐性の問題もあり、結核もカバーしているため診断が遅れる原因となることがあり、エンピリック治療の第一選択としては推奨されない。結核に対してレスピラトリーキノロン単剤の治療は禁忌であるため、結核の除外は必須。

4)外来で注射を使用する場合
・ 第3世代セフェム系
(治療例)
「ロセフィン®静注用[1g] 2gX1 5〜7日間」

<入院>

1)基礎疾患がない、あるいは若年成人:
・βラクタマーゼ阻害薬配合ペニシリン注射薬、PIPC(高用量)
(治療例)
「ゾシン®静注用 [4.5g] 1回4.5g 静注 6~8時間ごと 7-14日間」

2)65歳以上あるいは軽症基礎疾患:
・1)に加えセフェム系注射薬
(治療例)
「ゾシン®静注用 [4.5g] 1回4.5g 6~8時間ごと 7-14日間
+ ロセフィン®静注用[1g] 2gX1 7-14日間」

3)慢性の呼吸器疾患がある場合:
・1)、2)に加えカルバペネム系薬、ニューキノロン系注射薬
(治療例)
「ゾシン®静注用 [4.5g] 1回4.5g 6~8時間ごと 7-14日間
+ ロセフィン®静注用[1g] 2gX1 7-14日間
+ パズクロス®点滴静注液[500mg] 1回500mg 12時間ごとに7~14日」

 

非定型肺炎疑い

<外来>

1)基礎疾患がない、あるいはあっても軽い、または若年成人:
・マクロライド系、テトラサイクリン系経口薬
(処方例)
①「ジスロマック®SR成人用ドライシロップ[2g] 2gX1 空腹時に単回内服」
②「クラリス®錠[200mg] 2TX2 7日間」

2)65歳以上あるいは慢性の心、肺疾患がある場合:
・1)またはレスピラトリーキノロン経口薬
(処方例)
①「ジスロマック®SR成人用ドライシロップ[2g] 2gX1 空腹時に単回内服」
②「クラリス®錠[200mg] 2TX2 7日間」
③「クラビット®錠[500mg] 1TX1 7~14日」

<入院>

・テトラサイクリン系、マクロライド系、またはニューキノロン系注射薬
(治療例)
①「ジスロマック®点滴静注用[500mg] 500mg 点滴で2時間かけて1日1回 3~5日」
②「クラビット®点滴静注バッグ [500mg] 500~750mg を点滴で約60分かけて1日1回 7~10日(状況に応じて経口投与へ変更し合計7~10日とする)」
②「パズクロス®点滴静注液[500mg] 1回500mg 12時間ごとに7~14日」

 

肺炎球菌性肺炎

<外来>

1)アモキシシリン高用量(1500mg〜2000mg/日)ペネム系経口薬
(処方例)
「サワシリン®錠[250mg] 1日量1500mg(X3) or1日量2000mg(X4) 経口投与 3~14日」

2)ペニシリン耐性肺炎球菌が疑われる場合 (65歳以上、アルコール多飲、幼児と同居、3ヵ月以内にβラクタム系抗菌薬の使用):
・レスピラトリーキノロン経口薬
(処方例)
「クラビット®錠[500mg] 1TX1 7~14日」

<入院>

・ペニシリン系注射薬(常用量の2~4倍が望ましい)、セフトリアキソン(CTRX)、
第4世代セフェム、カルバペネム系薬、バンコマイシン
(治療例)
①「注射用ペニシリンGカリウム[100万単位] 100~200万単位 4~6時間おきに30分程度かけて点滴静注。シリンジポンプによる持続点滴も可能(例:200~400万単位12時間おき) 3~14日」
②「ロセフィン®静注用[1g] 2gX1 5〜7日間」

 

ICU治療肺炎

1群と2群から薬剤を選択し併用

<1群>
カルバペネム系注射薬
第3、4世代セフェム+クリンダマイシン
モノバクタム+クリンダマイシン
グリコペプチド系+アミノ配糖体系
<2群>
ニューキノロン系注射薬
テトラサイクリン系注射薬(ミノサイクリン)
マクロライド系注射薬

 


本記事は適宜、修正加筆しています。ガイドラインの改訂や新たなエビデンスの発見などがありましたら、お気軽にコメントやお問い合わせフォームからご連絡ください。

(参考文献)

成人肺炎診療ガイドライン2017

JAID/JSC 感染症治療ガイドライン―呼吸器感染症―

#市中肺炎 #ガイドライン #初期対応

 

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