緊急性の高い疾患の1つである大動脈解離についてです。大動脈解離は多彩な症状を呈するため、疑わないと見逃してしまうことがあります。今回は大動脈解離についてガイドラインに準じてまとめています。
Take Home Message
- 急激な背部痛を疑う患者には、造影CTを動脈相を含めて胸部〜下肢まで撮影する。
- 多彩な症状を呈するため、疑うことが大事である
- Dダイマー高値(>500ng/ml)は感度96.6%であり、疾患否定に有用である。
目次
大動脈解離の病態
- 大動脈壁が裂けて中膜レベルで剥離することで、もともとの血管腔(真腔)と新規にできた壁内腔(偽腔)に分かれることで生じる。
- 偽腔が拡大することで各臓器の虚血を生じたり、偽腔部が経時的に拡張し大動脈瘤を形成することもある。
大動脈解離の分類
簡便であるStanford分類が用いられることが多い。
Stanford 分類
A 型: 上行大動脈に解離があるもの
B 型: 上行大動脈に解離がないもの
DeBakey 分類
I型 :上行大動脈に tear があり弓部大動脈より末梢に解離が及ぶもの
II型 :上行大動脈に解離が限局するもの
III型:下行大動脈に tear があるもの
III a 型:腹部大動脈に解離が及ばないもの
III b 型:腹部大動脈に解離が及ぶもの
大動脈解離の症状
- 強烈な胸背部痛が7割に認められる。突然発症であり、胸部から腰部へと痛みが移動することが多い。
- 解離した部位に一致して、臓器虚血(心臓、腸管、下肢など)が生じることがある。
- その他の身体所見としては血圧の左右差、四肢の血圧差、大動脈弁閉鎖不全の雑音(45%)、心不全兆候などがあげられる。
大動脈解離の検査項目
Dダイマーが500mg/mlをカットオフとすると感度96.6%、特異度46.6%となり、非常に感度が高いため疾患否定のための重要な検査項目である。
大動脈解離の画像検査
CT室までの移動が可能なバイタルであるならば単純、造影CTをdynamic(動脈相、静脈相)で胸部〜下肢まで撮像する。
救急外来で迅速にチェックするのであれば、腹部超音波で大動脈の2相構造の確認、経胸壁心エコーで上行大動脈の解離の有無をチェックする。
大動脈解離の診断
- 単純CTでは三日月状の高吸収域(偽腔の新鮮血腫)を認める。
- 造影CT検査で大動脈の解離(flap)を認める。
- 内膜の石灰化が血管壁より内側へ変移して見えることも読影上のポイント。
<StanfordA型大動脈解離のCT像(動脈相) >
<Stanford B型大動脈解離CT像110F28>
(参考画像:医師国家試験107A54, 110F28)
大動脈解離の鑑別疾患
心筋梗塞、狭心症、急性膵炎、大動脈瘤破裂、尿管結石などがあげられる。
大動脈解離の治療
- StanfordA型→緊急手術
- StanfordB型→保存的治療(臓器虚血や、瘤径が拡大しているものは手術)
心臓血管外科医が不在である病院では、手術適応か判断に迷うのであれば高次施設への転送を躊躇しない。
初期対応
- 速やかな降圧(sBP100-120前後)と鎮痛(麻薬の使用も可)。
- バイタルが不安定であれば、挿管管理やA-line管理などを躊躇しない。
Take Home Message再確認です。
Take Home Message
- 急激な背部痛を疑う患者には、造影CTを動脈相を含めて胸部〜下肢まで撮影する。
- 多彩な症状を呈するため、疑うことが大事である
- Dダイマー高値(>500ng/ml)は感度96.6%であり、疾患否定に有用である。
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本記事は適宜、修正加筆しています。ガイドラインの改訂や新たな報告などがありましたら、お気軽にコメントやお問い合わせフォームからご連絡ください。
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