SAM(Segmental Arterial Mediolysis)とは?

SAMは比較的珍しい疾患ですが、突然の腹腔内出血をきたしうる疾患です。多くの人にとって、見慣れない疾患だと思いますが、少し簡単にご紹介いたします。

症例

60歳代男性。突然の腹痛を訴え救急外来を受診されました。
Vital signはHR110, BP75/45, SpO2:95(RA)であり、腹痛は持続的、苦悶様表情でした。
救急医はラインキープと採血を行い、すぐに造影CTを撮像したところ、下のような画像を認めました。

次に何をしますか?

まるで国試のような経過ですが、これは実際にあった症例です。
この症例をもとに今回はSAMについて説明していきたいと思います。

 

SAMとは

SAM(Segmental Arterial Mediolysis)とは、日本語では動脈中膜融解症と言います。その名の通り、動脈の中膜が融解することで血管壁が脆弱となり、多発瘤を呈します。多発瘤は破裂しやすく、突然の腹痛とショック状態などで搬送されることがあります。

疾患概念は、1976年にSlavinらによって提唱されました。
非炎症性、非動脈硬化性の変性疾患であり、中高年の方に発症が多いですが、その病因は未だよくわかっていません。

 

SAMの臨床像

あらかじめSAMと診断されることはあまりありません。というのも、突然の腹腔内出血で受診されることが多く、その際に撮像されたCT検査や血管造影検査で診断されることが多いからです

一般的に、SAMの典型的な臨床像として、本邦から内山らが以下の臨床基準を提唱しています。

  1. 中高年の患者
  2. 炎症性疾患や動脈硬化性疾患を否定できること
  3. 突然の腹腔内出血で発症
  4. 血管造影検査で数珠状の拡張と狭窄を認めること

 

SAMの確定診断と鑑別

確定診断には病理所見が必要であり、切除した動脈瘤の組織所見で中膜の壊死像を認めます。しかしながら、実臨床において手術によって瘤を切除することは稀であり、ほとんどが血管内治療で治療することが多く病理診断が不可能な症例が多いのが現状です。そのため先のような、内山らの臨床基準によって除外診断を行うことがほとんどです。

鑑別疾患としては、動脈硬化、先天性疾患(Ehlers-Danlos症候群など)、感染性、外傷性、炎症性、膠原病(多発血管炎、高安病、Bechet病、Henoch-Schonlein紫斑病など)、線維筋性異形成(FMD)などがあげられ、問診、身体所見、画像所見、各種検査所見から判断する必要があります。

 

SAMの治療法

一般的な患者像として、腹腔内出血を認める患者が来たとします。

まずはVitalを安定させるため循環を維持(輸液、輸血、カテコラミン投与など)します。
Vitalが許せば、造影CTをdynamicで撮像します。造影CTは出血源を大まかに特定でき、内臓臓器の虚血も判断できるため、可能な限り血管造影の前に撮像しておきたい所です。

内臓に虚血所見を認めた場合は、虚血臓器への血行再建術や切除などの必要性もあるため、開腹手術も選択肢にとなります。
しかし、出血時の開腹止血は困難であることも多く、臓器虚血があってもまずは血管造影検査で止血を行うこともあります。

内臓に虚血所見がない場合などは、血管造影検査で緊急止血術を素早く行うことが大事です。
この造影検査でSAMを疑う所見を認めれば、ほぼ臨床的にはSAMと診断されることが多いです。

 

SAMの術後管理

術後は血圧コントロールを厳重に行い、後出血が起きないか注意深く経過観察します。
同時に全身の血管のスクリーニング(頭部MRI、頚動脈エコー、胸部〜下肢までの造影CT)を行い、他の動脈に瘤形成がないかチェックを行います。

また、先にあげた鑑別疾患を鑑別していきます。

 

SAMの予後

SAMに関しては明らかな予後はわかっておりません。文献では、腹腔内出血のmortality rateは50%以上という報告も多々認められます。

動脈瘤が多発するため、出血のリスクが非常に高くなります。また腹部内臓動脈に瘤形成を起こすことが多いですが、頭蓋内にも瘤を形成することがあり注意が必要となります。出血に対してコイル塞栓を行なった後も、定期的に画像評価を行い動脈瘤の状態を評価することが大事です。

面白いことに多発動脈瘤を形成していても、自然経過で治ってしまうこともあります。

Take Home Message

  • 突然の腹腔内出血患者を認めたら、造影CT→血管造影検査を!
  • SAMは臨床診断であるが、他の鑑別疾患の除外が必要な除外診断である。
  • SAMは自然に治ってしまうこともあるが、定期的な画像評価は必須である。

 

症例の続き

症例の経過の続きは、Dr.Fellowのタイムラインで紹介しています。

 


本記事は適宜、修正加筆しています。ガイドラインの改訂や新たな報告などがありましたら、お気軽にコメントやお問い合わせフォームからご連絡ください。

 

(参考文献)

Slavin RE, Gonzalez-Vitale JC (1976) Segmental mediolytic arteritis: a clinical pathologic study. Lab Invest 35(1):23–29

Anil Kumar Pillai et al. Segmental Arterial Mediolysis. Cardiovasc Intervent Radiol (2014) 37:604–612

浅田ら, Segmental arterial mediolysis が原因と考えられた左胃大網動脈瘤破裂に伴う 腹腔内出血に対し経カテーテル的動脈塞栓療法を行った 1 例. 日本消化器外科学会雑誌. 2015;48(3):255-263

 

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